Estuary
Year: 2023
手作りの陶製タイルによって構成された、リジッドな印象の作品。灰青色、紺色、灰色の三色のタイルが整然と並び、規則正しいグリッドが表れている。そこを二本のなだらかな放物線が横切っていく。金と青の両線はお互いの領分を克明に保ちながらも一部は重なっている。キワンガは自らの調査研究によって歴史を解きほぐし、周縁化されて歴史からは取りこぼされていった事象を私たちの眼前に甦らせる。「Estuary(三角江)」と名前が付けられている本作は、淡水と海水が出会う場所という語意に何を思考させようとしているだろうか。同時期に作られた同様にタイルを用いた他作品では、「Cascade」「Magma」「Rift」「Dune」など自然を表す地学的な単語が並ぶ。タイルという素材は大地から得られる土と、土を焼く炎によって発展してきた人類の文化、産業、技術の歴史を思わせる。また、美術における金と紺碧の組み合わせから考えれば、聖母や王侯貴族の象徴色として絵画では特別な意味を持つ。また、マリンブルーの顔料であり重要な交易品としての価値を持ったラピスラズリの歴史を想像させる。金の線が青の線の領域を侵犯しているようにも見えてくる。
© UESHIMA MUSEUM COLLECTION
本サイトに掲載されているデータは著作権の保護の対象となります。無許可での転載・転用はご遠慮ください。
