KEISUKE TADA
多田圭佑

trace/wood #80
1986年愛知県生まれ。2012年、愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程修了。ゲームCGや映画など「仮構された世界」と作家が表現するものを題材としている。しかし、多田の作品それ自体はヴァーチャルに向くことはなく、極めて物質的に作られている。叩き壊した扉、古い絵画がひび割れて今にも剥落しそうな様子、チェーンがぶら下がった壁。おそらく作家に対する事前の知識無くしては、これがすべて「絵画」であり、絵具による「描写」だとは認識できないに違いない。誇張ではなく、作品内の「全て」が絵具でできている。多田にとってこれはある意味写実の表現なのである。ヴァーチャル空間の中にある触れられないもの、触れていないのに確実に伝わってくる感触、それらを具現化することに絵画としての写実性を見出している。現実的でないもののリアリティを再現するのである。この倒錯じみた触れられないものへの愛着と妄執が多田のイマジネーションの源泉となっている。「VOCA展 2022」(上野の森美術館, 東京)、「地底人とミラーレス・ミラー」(2022年, gallery αM, 東京)、「現代美術のポジション2021-2022」(2022年, 名古屋市美術館)ほか、国内外での展覧会多数。