Anicka Yi
Releasing the Human From The Human
Year: 2019
Medium: kelp, aquazol, glycerin, crepeline, acrylic, LED, animatronic insect
Dimensions: 71.1 x 71.1 x 71.1 cm (28 x 28 x 28 in.)
Acquired from Pace Gallery, 2026
アニカ・イの代表作の一つ「Kelp Sculptures」シリーズ。「Kelp Pod」とも呼ばれているように海藻類の浮袋のような繭型をしたものも多く制作されているが、本作は球体に近い。透けて見える骨組みの構造からしてもアジアの街でよく見かけるランタンや提灯を模しているのだろう。この薄い布地のように見える皮膜は、大型の海藻類を引き伸ばして乾燥させたものだ。作品に近づいてみると、その薄く透けるような海藻の膜の内部で光が時折ちらつくように見え、また何かの羽音が聞こえるはずだ。影を見れば、それが蛾のシルエットであることがわかる。機械の蛾が、内部をぐるぐると飛び回っているのである。外から私たちがこれを見る時、いくら羽ばたいたところで逃れようのないこの繭は揺籃どころか監獄であるように思える。しかし、おそらくは外の世界を知らぬ中の蛾にしてみれば、未知の脅威を遠ざける暖かで安全な巣なのかもしれない。海藻の膜に阻まれて私たちは機械の蛾を仔細に知ることはないが、このたくましい羽音や光をちらつかせる激しい運動性の中に、あるはずのない生命を想像しはしないだろうか?生命体である海藻を自らの存在を守るために利用する機械という、人とは異なったインテリジェンスを想像しはしないだろうか?のちに生物とテクノロジーが奇妙に癒合する、ポスト・バイオロジカルな作品を多く展開していくことになるイにとって、本作はその原点的な作品となった。
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