Am Everything That Will Save Me - Hand to Hand, Heart to Heart 2 (Bird and Lava)
Year: 2024
Medium: wood, acrylic, graphite, string
Dimensions: 91.4 cm in diameter x 9.5d cm (36 in. In diameter x 3 3/4d in.)
Acquired from Pace Gallery, 2024
2020年に同名のタイトルのものを発表している。そちらは下地となる木製パネルの白い木肌が見えている。一方で本作は絵具と木炭の黒によって全体が満たされている。「Bird and Lava」はダイソンが近年シリーズで制作を続けているプロジェクトである。ダイソンは現代社会においても非連続ではない奴隷の歴史とその精神的解放のために、黒という色が持つ優美さと、作品の造形の豊かさをもって実現しようと試みている。都市や建築がいかに人種や社会的格差を助長する構造を内包しているか、その事実を詳らかにし、人々に突きつけるダイソン。本作の連なる「Bird and Lava」は、自身を含む黒人のあらゆる尊厳を守るべくしてダイソンが取り組んでいる建築的な思考アプローチにおける重要な指標となるだろう。「私たちは液体と山のいずれでもあり、鳥と溶岩(bird and lava)のいずれでもあることが求められる」と作家が語っているように、本作においては円の中心線を垂直に切り通した溝を経て、丸い器に黒い液体が溜まっていく様子が想像される。ドロドロとして見えるそれはまさに溶岩のような熱量と質量を感じさせる。とめどない溶岩がいつしか社会や都市の格差構造を飲み込んで、やがては冷え固まって真っ黒の山となるのかもしれない。その結果として、大空を舞う鳥のように人々を自由な存在へと解放してくれるのかもしれない。それを成すことができるのは他の誰でもない、私やあなた自身の手と心によってなのだ、というダイソンの強い意志が見えてくる。黒い液体を包む円は私たち人間の存在、あるいは人間の社会構造を示唆するもののように見えてはこないだろうか。