AIKO YUNO
油野愛子
油野愛子
1993年大阪府生まれ。2015年、京都芸術大学美術工芸学科総合造形卒業ののち、2017年にロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(ロンドン)への短期留学を経て、2018年に京都芸術大学院美術専攻総合造形領域を修了。平面作品として「Narrative」シリーズ、立体作品として「THE HOUSE」シリーズを継続的に制作している。工芸科に学んだ知識と関心に下支えられているであろう研究をもとに、素材に関する様々な試行を経て到達した、造形と素材の予想外な組み合わせによって、不安定でしかし鮮烈な視覚体験を実現している。2017年CAF賞入選、2018年関渡美術館交換派遣研究員レジデンスプログラム(台湾)に参加、2019年群馬青年ビエンナーレ入選(群馬県立近代美術館)などがある。大作のコミッションワーク「THE HOUSE(every time, everywhere. your place to stay is in your mind.)」や「Narrative」シリーズは、現代美術の企業コレクションとして日本をリードする大林組大阪本店内(2023年新社屋)に飾られている。
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Title: CAMELLIA (Narrative)
Year: 2022
Medium: spray, resin, acrylic on canvas
Dimensions: 100 x 80.3 cm (39 3/8 x 31 5/8 in.) -
Title: THE HOUSE 12 (peal red)
Year: 2017
Medium: pigment on bronze
Dimensions: 13.5 x 16 cm (5 1/4 x 6 1/4 in.)
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CAMELLIA (Narrative)
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Year: 2022漆黒の鏡面を滑るように「絵画」が捲り上がっている。目の当たりにするとその違和感は強烈なものがある。黒い鏡面は樹脂製のプレートである。アクリル絵具をその上に塗り重ね、そこへスプレーペイントで文字や着彩がなされている。絵画の、というよりは塗装の技術的な見地からアクリル絵具にスプレーのようなラッカー塗料を重ねることは禁忌に該当するだろう。なぜなら、ラッカーが揮発性の強い溶剤を含み、下にあるアクリル絵具を溶かしてしまうからだ。油野はこの禁忌を逆手に取っている。スプレーで浮かせたアクリル絵具の塗膜を掬い取ることでこの静謐な黒い鏡面を露わにしているのである。華美なスプレーペイントとの色彩の対比が激しい。本作は正に鏡として、前に立つ鑑賞者の姿を映し出し、作品へと向けられていたはずの視線を突き返す。鑑賞者が見る対象はいつの間にか作品ではなく自らの姿にすり替わっている。バロックの巨匠カラヴァッジオが描いた、漆黒の水鏡に映る自らの姿に懸想する余りに命を落とし、一輪の花(椿ではなく水仙であるが)に姿を変えたナルキッソスの神話を一場面を思い出させる。
Medium: spray, resin, acrylic on canvas
Dimensions: 100 x 80.3 cm (39 3/8 x 31 5/8 in.)
Acquired from Tomio Koyama Gallery, 2022
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THE HOUSE 12 (peal red)
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Year: 2017油野の代表的な作品シリーズの一つである「THE HOUSE」。この作品シリーズは模型の家屋の内部で化学反応を起こした発泡ウレタンがわずかな隙間から溢れ出ていく様を型取りし、ブロンズで鋳造したものである。本作は手のひらにも載るほどの小さな作品で、見た目は発泡ウレタンの軽やかな質感を残しているため軽量に見えるが、実際にはブロンズ製の塊であるため非常に重い。油野の作品は常に素材の特性の裏をかく。本作においては、見た目通りの発泡ウレタンであれば軽いはずという視覚的な情報と実際のブロンズの質量が恐ろしいミスマッチを生んでいるように、鑑賞者が自らの目や感覚を疑わざるを得ないような不安感に陥れる。本作は特に、壁にかけて展示するという更に軽量に見せかける仕掛けを重ねることによって、鑑賞者の感覚を悪戯に狂わせる。
Medium: pigment on bronze
Dimensions: 13.5 x 16 cm (5 1/4 x 6 1/4 in.)
Acquired from Tomio Koyama Gallery, 2022