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Nigel Cooke
Nemesis
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Year: 2026
Medium: oil on linen
Dimensions: 250 x 240 cm (98 3/8 x 94 1/2 in.)
Acquired from Pace Gallery, 2026
神罰を司る女神の名を冠した大作。肌色の円が大きく描かれ、その下方に赤黒い無数の線描が絡まり合って曖昧な群形を成している。線の流れや陰影から形象を追っていけば、抽象化された人体らしき像が浮かび上がってくるようにも感じられるが定かではない。しかし、作家の暗いパレットを想像させる重苦しい色彩とネメシスという名があいまって本作に穏やかでない気配が漂うのは確かである。ごく近年まで天文学者の間でその存在の有無についてが議論されてきた仮説上の天体もネメシスと名付けられた。地球上に繰り返し絶滅をもたらしてきた未発見の太陽の伴星であるとされていた。画面の左下には古代ギリシア語で「θραῦσμα」と書かれている。断片や破片といった破壊された一片を表す言葉で、打ち砕く「θραύω」という動詞から派生している。オウィディウスの『変身物語』によれば、他者の愛を拒絶し続けたナルキッソスの自惚れを死をもって償わせたのがネメシスであった。神罰によって打ち砕かれるものとは、人々の心の底に暗く巣食っている傲慢に他ならない。クックは、本作において神話から自然科学まで幅広い人類の叡智を渉猟している。
© Nigel Cooke, courtesy Pace Gallery