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trace/wood #9
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Year: 2016
Medium: acrylic, urethane paint on cotton
Dimensions: 118 x 92 cm (46 1/2 x 36 1/4 in.)
Acquired from SBI Art Auction, 2025
絵具を撒き散らして汚れた板貼りの床と見誤るが、板やビスに至るまで画面上に視認される全てのものはアクリル絵具を素材として造形されている。映画撮影などで用いられる特殊造形のアルバイトをしていたこともある多田。絵画においては描くことによってその素材感や物質感を再現的に表現するのが通例だが、多田にとってはそうでなかった。実際の木板を使って型を取り、そこに絵具を流し入れて成形する。そこに汚れを加筆していく。従来も絵画において絵を支える下地は布や板や壁ではあったが、それは作品の支持体であってできる限りは隠蔽されてきた。汚れらしきものが仮にここでは絵画に相当するものだとすれば、多田が試みているのはその絵画を支える下地を絵画と同じメディウムによって造形することで、絵画そのもの完全に同一なものとして提示することである。あるいは、絵具による板の造形そのものを絵画と初めからみなすならば、塑像的な空間的な物質性を前提とすることで絵画における平面性からの逸脱を試みるものだ。ポロックは床に画布を広げて水平面に降り注ぐ絵具の痕跡を絵画と呼び直したが、多田は絵具のメディウム(表現の媒体)かつマテリアル(物質的な素材)であるという両義性を前面化することによって床に広がった絵画らしき汚れを絵画作品として召喚し得たのである。メディウムの固有性を否定し、メディウムの再発明を絵画の領域において実践する絵画。