KATHARINA GROSSE
カタリーナ・グロッセ
カタリーナ・グロッセ
1961年フライブルク（ドイツ）生まれ。ミュンスター芸術アカデミーで学んだ後、デュッセルドルフ芸術アカデミーでGotthard Graubnerに師事、1990年マイスターシュウラーを取得。1990年代後半からスプレーガンを制作に導入し、色彩のみで成立する、空間と色彩が渾然一体となったような絵画を制作する。2015年第56回ヴェネツィア・ビエンナーレにて大規模なインスタレーションを展開し注目される。世界各地の美術館、アートプロジェクトで「絵画」の概念を覆す巨大なインスタレーションや屋外作品を発表。2019年ボストン美術館（US）で開催された「ジャクソン・ポロック｜カタリーナ・グロッセ」展は、抽象表現主義の巨匠と並び現代の絵画表現の開拓者として評価する企画として話題となった。「すべてのものが絵画となりうる」「色は私にとって非常に重要です。なぜなら色は直接、共鳴を呼び起こすからです」と語るグロッセは、まるで巨人が描き、置いていったような大作を制作、発表し続けるとともに、キャンバスや紙の作品の表現も更新し続けている。
現在ベルリン（ドイツ）とニュージーランドを拠点に活動。
現在ベルリン（ドイツ）とニュージーランドを拠点に活動。
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Title: untitled
Year: 2013
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 200 x 130.3 cm (78 3/4 x 51 1/4 in.) -
Title: Untitled
Year: 2022
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 201 x 155 cm (79 1/8 x 61 in.) -
Title: o.T.
Year: 2013
Medium: acrylic on aluminium and linen
Dimensions: 72 x 80 x 144 cm (28 3/8 x 31 1/2 x 56 3/4 in.) -
Title: Untitled
Year: 2003
Medium: Acrylic on linen
Dimensions: 200.7 x 132.1 cm (79 x 52 in.) -
Title: Untitled
Year: 1995
Medium: Oil on aluminum
Dimensions: 50.2 x 33 cm (19 3/4 x 13 in.)
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untitled
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Year: 2013グロッセは絵画の平面性を超越して空間に絵画を存在させようとしている。フォンタナが裂け目の奥に広がる次元を絵画に取り入れ、ステラが矩形から絵画を解放し、いよいよ絵画が平面という支持体ばかりに依存しなくなった現代においてはさまざまなメディウムが試みられた。エアロゾルは70年代以降ストリート以降盛んに用いられ始めるが、カラー・フィールドの作家ジュールズ・オリツキーや同時期にNYにいた草間彌生などは60年代既にスプレー・ガンを用いた描画に取り組んでいる。こうして、色彩を対象物に向けて「噴霧」する行為は絵画のメディウムとして取り入れられてきた。グロッセの一部の作品では色彩を噴霧することによって生じる陰陽の関係性が可視化されている。色彩の射出を遮蔽する物体を置くことによって色抜けとして示す、つまり、陰刻的な絵画を実践してみせている。本作ではその傾向が明らかに表れていると言えるだろう。型紙のようなものを段階的に画面上に置き換えながら、その上から色彩を吹き付けている過程が想像できる。そして、その「着彩されなかった」各レイヤーごとの色抜けエリアこそが、図像なり形象なり構図なりの「絵画らしさ」をもたらしている。畢竟、本作の本質であるように見える鮮やかな色彩は、この観点においては絵画の余白を意味するとさえ言えるかもしれない。絵画の図と地の関係性におけるポジティブとネガティブを反転させるこの試みによって、イリュージョニズムが克服される。それは、グロッセが平面性に拘泥せず、空間を射程において描画を展開していくことと思考の根は等しい。
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 200 x 130.3 cm (78 3/4 x 51 1/4 in.)
Acquired from Christie’s, 2023
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Untitled
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Year: 2022スプレーガンを用いた作品は、今やグロッセのシグニチャーであると言える。本作では、キャンバスの上に蔦状のものを置いてから色彩を吹き付けている。ステンシル、あるいはサイアノタイプのように画面に触れた物体の痕跡を直接的に残すという行為はこれまでのグロッセの制作からも裏付けが得られる。建築物や空間に対して色彩を強烈に噴射することで、グロッセの絵画はキャンバスという平面的な媒体から三次元へと延伸し、自らと鑑賞者のいずれをも絵画空間へ物理的に没入することを実現してきた。絵画とは鑑賞者と作者の間にあって両者が互いの思考を見せ合うためのスクリーンなのだ、とグロッセは語っている。思索のインターフェイスとしての絵画である。そのコンセプトに従えば絵画=スクリーンは必ずしも従来の絵画らしい姿であることに囚われる必要はない。作者と鑑賞者の交感、そのためによりふさわしい新たな手法と形態をグロッセが選び取るのである。本作で言えば、画面の中で最も主張の強い線の要素を、痕跡というおよそ非絵画的手段によって獲得している。霧状の色彩がその噴射の角度や強度によって鮮やかなグラデーションを作ると同時に、線の影をキャンバス上に焼き付けている。その線はキャンバスから引き剥がされる時、絵具を諸共に食いちぎって生々しい傷跡となって表れたのだ。これは、描かれた線とは異なる。かつて絵画は絵具を重ねて光をあまねく写し取ろうとするものであったが、グロッセは本作において鮮やかな影を傷として残したのである。絵画とは互いの思考を交わすためのもの、とグロッセは述べた。ならば本作に残された痕跡に対して私たちは何を見、そしていかなる思考を返せば良いだろうか。
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 201 x 155 cm (79 1/8 x 61 in.)
Acquired from Gagosian, 2022
展示会履歴
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- 2023年 Art Collaboration Kyoto
https://a-c-k.jp/
- 2023年 Art Collaboration Kyoto
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o.T.
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Year: 2013キャンバスから色彩を、絵画を解放したグロッセは、巨大なペインティングを立体化し、屋外にも展示している。クンストパラスト美術館（デュッセルドルフ）、ボン美術館などの建物横には、突如「色彩」が立ち上がり、巨人によって置かれていったような風情で彼女の作品が設置されている。アルミニウムにアクリル絵具をスプレーガンで着彩した本作は「色の絵画彫刻」とも言えるだろう。鮮やかに、エッジの立った３Dペインティングは空間を変容させる。
Medium: acrylic on aluminium and linen
Dimensions: 72 x 80 x 144 cm (28 3/8 x 31 1/2 x 56 3/4 in.)
Acquired from PHILLIPS, 2022
展示会履歴
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- 2022年 Art Collaboration Kyoto
https://a-c-k.jp/
- 2022年 Art Collaboration Kyoto
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Untitled
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Year: 2003男性主権的なメディウムであった絵画に対し、スプレーガンを武器に「色」そのものでその概念を覆し、絵画を革新したグロッセ。彼女の代名詞であるスプレーガンを用いながら、ドリッピングにより絵の具＝色の物質的な存在感も際立たせる、重層的で繊細な表現。カタリーナ・グロッセの抽象表現主義的スタイルの特徴を顕著に表したペインティングである。
Medium: Acrylic on linen
Dimensions: 200.7 x 132.1 cm (79 x 52 in.)
Acquired from PHILLIPS, 2022
展示会履歴
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- 2022年 Art Collaboration Kyoto
https://a-c-k.jp/
- 2022年 Art Collaboration Kyoto
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Untitled
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Year: 1995赤と緑のくっきりとしたコントラストがまず目に飛び込んでくる。アルミニウムの上に油絵具を塗り重ねて、重層的な奥行きを持たせた。緑の下に塗られた赤の絵の具、その下に塗られた暗色の絵の具が互いに干渉しあい、複雑な画面を構成している。その物質感によって「色」そのものが絵画となる。絵画のコンテクストから「色彩」を解放し、色そのものを表現したグロッセの、直球ともいえる作品だが、深みのある色彩は、アクリル絵の具をスプレーガンで吹き付けた大作とはまた趣が異なり新鮮である。
Medium: Oil on aluminum
Dimensions: 50.2 x 33 cm (19 3/4 x 13 in.)
Acquired from Christie’s, 2022