KAZUKI UMEZAWA
梅沢和木

キャラと瓦礫の理想郷
1985年埼玉県生まれ。2008年、武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業。インターネット上からさまざまなキャラクター画像を集め、それらを断片化し、再構成していくデジタル・コラージュによって風景あるいはポートレートらしきものを作り出す。細かく分断されたキャラクターの身体パーツを最小要素としているが、それぞれが腕や髪、瞳であったという属性はかろうじて保っている。それらを異常な密度で折り重なるように圧縮した集合体は、情報過多なネット空間を象徴する景色であり、その過剰な風景こそが梅沢を他の作家と差別化する。梅沢の作品は、個にフォーカスするものではなく、集合としての総体が空間的に提示されているのである。梅沢のその偏執的なまでの集合性を、逆に崩壊するベクトルに転じて捉えることもできるだろう。2011年の東日本大震災によって現実に起きた瓦解した風景を目の当たりにした梅沢は、以降は被災地の写真イメージを作品に取り入れている。瓦礫そのものを絵画面に持ち込むのではなく、そのイメージのみを取り込もうとする手つきがいかにも梅沢らしい。梅沢はいわゆるコラージュやアッサンブラージュなど非常に物質的な手触りで行う技法をデジタル空間に持ち込んでいるのだ。といっても、現実と分離したデジタル空間も仮想環境であるにせよ「空間」であるので、そこに置かれたオブジェクトは三次元的に存在するのだと極言することもできるだろう。しかし、その理想形を絵画として存立させようとすれば、現時点においてはキャンバス上に押し込めておく他ない。その絵画の物質性から逃れきれない足掻くような痕跡が、出力された画面の上に、指や筆で加筆されている「絵具」に現れているようだ。国内外の展示発表多数、00年代を象徴するような活動を行なっていたアーティスト集団「カオス*ラウンジ」にもかつて所属し、彼らのイメージ的な中心を担った。2018「VOCA展2018」佳作賞受賞(上野の森美術館、東京)。東京都現代美術館、森美術館(東京)には作品が収蔵されている。