TAKANAO KANEKO
カネコタカナオ
カネコタカナオ
1977年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒業。活動初期はモノクロームのドローイングを中心に発表している。その当時から、コミックやイラストレーションのステレオタイプやミームを取り入れたややブラックで風刺の効いた作風は近作にも引き継がれている。モンスター、と作家は表現しているが、社会が情報で溢れている現代において人々がそれに飲まれてアンコントローラブルに陥ることを表現して警鐘を鳴らしている。しかし、誤解を恐れず言うならば、情報化社会のモンスターはカネコである。80年代〜現在のさまざまなキャラクターイメージを蓄積し、そのいずれでもない何か得体の知れない存在を飄々として生み出す。カネコの直近の作品は、コラージュとカッティングされたパネルがレイヤー構造になっている。情報の積層の上にカネコの描写がさらに重なる形である。カネコの作品は「〇〇らしさ」を感じさせる絵柄でありながら、その原典を明らかにするどころか煙に巻く。カネコはポップアートやそれに続くシミュレーショニズムやアプロプリエーションの作家たちが「オリジナル」の絶対性を揺るがしてきたのを継承しつつ発展させてもいる。正体不明の「〇〇らしさ」によって、「オリジナル」を偏在させてしまうのである。インターネット上の根も葉もない噂が、まるで真実の如く広く伝播していくのと同じように。
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Title: XY 02
Year: 2022
Medium: acrylic, wood panel, acrylic plate, comic book cutouts
Dimensions: 145.5 x 112 x 3.6 cm (57 1/4 x 44 x 1 3/8 in.)
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XY 02
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Year: 2022本作において、カネコはさまざまな引用を試みている。重層的な構造の、まず一番表層はXYXYと意味深な窓が開けられたパネルになっている。その窓の奥には断片的にでも見れば自ずとそれとわかる有名コミックのコラージュがある。この二重性こそが本作の最も注意すべき点である。カネコの作品にはいつも、キャラクター的に描かれた「モンスター」が存在する。そのモンスターは、いろいろな漫画的描写の断片が寄せ集まって構成されている。しかし、そのパーツ一つ一つは、既視感をおぼえるものの明確にそれのオリジナルが何であるかは判然としない。とあるカテゴリに属するさまざまなキャラクターのエッセンスが、丁寧に拾い上げられ、カネコの手によってそれらしい風味を保ったオリジナルの表現として再構成されている。その奥にはまるで手を加えていないさまざまなコミックの断片がコラージュされている。この両者の対比が同一平面上に存在することは非常に野心的なものだ。私たち鑑賞者は意味深な窓からコラージュを覗き見ながら、カネコの「らしい」雰囲気にますます飲まれていく。これは情報化社会の闇を主題に置いているカネコによる意図的な思考の誘導であるだろう。これは罠である。
Medium: acrylic, wood panel, acrylic plate, comic book cutouts
Dimensions: 145.5 x 112 x 3.6 cm (57 1/4 x 44 x 1 3/8 in.)
Acquired from Art Front Gallery, 2022