AGNES MARTIN
アグネス・マーティン

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1912年マックリン(CA)生まれ、2004年タオス(US)にて没す。ウェスタン・ワシントン大学カレッジ・オブ・エデュケーションを経て、1942年コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジにて学位取得。卒業後はニュー・メキシコ大学アルバカーキ校にて学びながら美術講師を務め、再びコロンビア大学に戻り1952年修士号を得た。1950年代後半に本格的にNYに移ってからは同世代のエルスワース・ケリー、ロバート・インディアナ、バーネット・ニューマン、アド・ラインハートらとの知己を得て、ポップアート、抽象表現主義、カラー・フィールド、ミニマルアートという美術動向のまさに渦中にあった。一貫して抽象表現主義との精神的近さを表明していたマーティンであるが、作品は典型的なミニマリズムの思想を想起させる。特にマーティンの評価を不動のものとしている60年代以降の水平線やグリッドによる幾何学的抽象作品においては、コロンビア大学時代に東洋思想、特に鈴木大拙の同大学における特別講義を受けて仏教および禅の思想を学んだことがその禁欲的な作風に少なからず影響を与えている。マーティンが自身の作品を評して「対象も空間も線も存在しせず、形態というものが無い」と語ったことは、徹底的に造形や物性から脱却し概念上でも絵画上においても抽象的であり続けた作家の精神を象徴している。マーティンを取り上げた国際展や重要な展覧会はもはや数えるまでもなく、抽象表現主義からミニマル・アートの時代最高峰の画家として世界中の美術館に作品が収蔵されている。紛う方なき20世紀現代美術の巨匠である。