THOMAS RUFF
トーマス・ルフ

Substrat 7 III
1958年ツェル・アム・ハルマースバッハ(DE)生まれ。ベッヒャー・スクールと呼ばれる、デュッセルドルフ芸術アカデミーにおいてベルント&ヒャラ・ベッヒャーに薫陶を受けた新しい世代の写真家たちの一人として早くからその才能を知られた存在であった。ルフは写真の概念を現代的に塗り替えた作家であると目される点で美術史上重要な位置を占める。「Portrräts(肖像)」というシリーズがある。友人たちを撮った、変哲もない胸像写真を、2メートル以上に「大きく引き伸ばして」見せた。等身大のサイズを大きく逸脱したそれは、そこに写された「人物」を見るというよりも、人物が写った大きな「写真」を見る、という鑑賞者の意識を大きく変えるものだった。写真が、単に事実を写し取るだけのテクノロジーから、可塑性を有した「イメージ」としてより広義性をもって認識されつつある現代社会の現実を可視化したのである。写真はカメラを使えば誰でも可能なもの、つまり「撮影」という行為に帰属するものであるという通念から離れ、既に世界には「イメージ」が溢れており、写真とはそれを取り扱う視覚的表現全般を指すものであるのだと、野心的な再定義をしてみせた。ルフの実践によって、写真は、時として「撮影」という行為すら不要なものへと生まれ変わったのである。1992年のドクメンタ9(カッセル)、1995年・2005年のヴェネチアビエンナーレ、その他国際展、主要美術館個展多数。