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霧と山 2020-11 / kiri to yama (Fog and Mountain) 2020-11
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Year: 2020
Medium: iron, glass, copper wire
Dimensions: 31 x 41 x 29 cm (12 1/4 x 1/8 x 11 3/8 in.)
Acquired from ANOMALY, 2024
鉄とガラス。青木の作品は鉄板を溶断して製作したパーツを組み上げることで三次元的な造形を生み出す。青木自身、作品制作の99%は鉄の溶断が占めると述べているように、それはいわば画家にとっての線描であり彩色である。溶断とはすなわち鉄を高温度の熱によって切断することだが、ハサミで紙を切るようにはいかない。本作で用いられている20個の円形の一つ一つは何千度という熱によって硬い鉄が溶け落ちるまでの時間をそれぞれに内包している。綺麗な円形を成していながら、その断ち跡は激しく未だ炎の熱を帯びるかのように見える。本作は小規模ながら、それ故に青木のタフな手仕事がありありと間近に見えるだろう。うち5つの円には深い赤色のガラスが銅線によって括り付けられている。青木の作品は時にその場所でなくては二度と成立し得ないほどに、それが置かれる空間と呼応するように作られる。本作においても、陽の光が時間とともに赤いガラスをさまざまな向きから潜り抜けるにつれて、赤い光のつぶてがあたりを遊歩することだろう。一つの円に対しその内径にぴたりと沿ったひとまわり小さな円が直行するように溶接されている。それによって円は球へ、その大小10組の球の連続によってふわりと跳ね上がるような弧が宙に描かれていく。鉄とガラスによって作られた硬い彫刻は空間において柔らかな運動を示すだろう。