GENSHO SUGAHARA
菅原玄奨

Tactile #24
1993年東京都生まれ。2018年、東京造形大学大学院造形研究科修士課程彫刻専攻修了。「テクスチャーと触覚性」 を主なテーマに掲げており、FRPや粘土で作る塑像にグレーのサーフェイサーやパール状の特殊塗料などを施した彫刻作品を制作している。テクスチャー(Texture)とは本来その語源通りに読むならば織物(texo織る + turaこと)の意になり、文字(text)とも根を同じくする。織り目の手触りや視覚的な質感からだろう、転じて広義には触知に関わる全般を指す語である。舌触り、手触り、肌理、音響。彫刻では主に作家の触覚から得られた質感のある表現が鑑賞者の視覚に伝達される際に言われることが多いだろう。菅原の作品の多くは、この手触りを視覚的に伝達することに長じている。鑑賞者は目でその物質に纏わされた手触りを明らかに読み取ることができる。例えば、光を見事に柔らかく吸収するマットグレーの彫刻シリーズがあるが、有機的フォルムをデジタイズしたような不自然な造形とグレーの低反射性によって非現実的な存在感を示すと共に、細やかな粒状のしっとりとした表面の手触りを鮮烈なまでに目に訴えてくる。「触覚性」これをどう解釈すべきだろうか。本来、美術の専門用語としては様式論と共に語られるべき語である。ルネサンス期や古典主義など「距離、奥行き」といった「視覚性」を強調する表現との対比によって、古代エジプトや初期ローマ時代、印象派などの絵画様式に見られる「近接、平面性」に重きをおく表現を指す。菅原が正しくこの語を使っているとすれば、例えば映像のクローズアップのように、彫刻における「テクスチャー」を超近視眼的な体感強度で鑑賞者に伝えるという菅原作品の特徴がまさに当たっているだろう。在学中に選出された「群馬青年ビエンナーレ 2017」において奨励賞を受賞、その他国内外での発表多数